2017年1月20日に第45代アメリカ合衆国大統領に就任したドナルド・トランプ氏。アメリカファーストを掲げ、選挙公約にも不法移民流入阻止のためメキシコとの国境に「通過不可能な具体的な障壁」を建設するということを掲げ、就任からわずか5日後の1月25日には大統領令にサイン。3月の議会では26億ドル(約2900億円)の予算を計上しました。
現在もアメリカとメキシコとの国境にはフェンスが建っていますが、あくまで簡易的なフェンスのため、上から乗り越えたり、フェンスの下に穴を掘ったりしての不法入国者が絶えず、それを阻止するため、まるで万里の長城かのような長さ約3200kmにも及ぶ長大かつ通過不可能な壁を建設し、さらにその費用を将来的にメキシコに負担させるというもの。
この長大な壁の建設に関して話題になったのが、約40年前に小松左京氏によって書かれたSF短編小説「アメリカの壁」。「輝けるアメリカ」「美しいアメリカ」というスローガンを掲げて当選した孤立主義者の大統領率いるアメリカが、突如現れた謎の霧状の壁に覆われ、交通や通信などが不通になり、世界から孤立する…という話。
2017年1月27日付の京都新聞が、現在のトランプ政権とこの40年前に書かれた小説とを比較した記事を載せたことにより話題が広がり、その後、出版元の文藝春秋社では短編集だった電子書籍版「アメリカの壁」から表題作の「アメリカの壁」のみを単体の電子書籍(e-booksセレクション)としてリリース。その後も各新聞紙などで数多く取り上げられるに至ったのだとか。
その元の短編集の方の「アメリカの壁」を本日リニューアルして販売されました。
リニューアルの内容としては下記の2点。
1.表題の「アメリカの壁」でも大きな役割を果たし、「強いアメリカ」の象徴ともいわれたB-1爆撃機。そのB-1爆撃機が描かれた文庫発売当時のオリジナル表紙に変更。
2.「アメリカの壁」が発表された1977年当時の時代背景や、作品に登場する「壁」の意味などを、小松左京氏の作品を管理する小松左京ライブラリが新たに書下ろした解説を追加収録。
既に電子書籍版の短編集「アメリカの壁」を購入されている方も再ダウンロードすることによって読むことが出来るほか、文藝春秋としては初の試みとして、この電子書籍版の解説部分を2017年12月30日までの6ヶ月間の期間限定で無料配信中です。
初めて公開される小松左京氏の自筆メモや、プロの漫画家として活躍した時期もあるという著者の一コマ漫画なども特典画像として収録されていますので、解説だけでも無料の期間中にぜひどうぞ。(でも、解説だけ読むと結局本編も読みたくなるんですよね(笑))