2019年度のノーベル化学賞を日本の吉野彰(よしの あきら)さん(旭化成名誉フェロー・名城大学教授)らが受賞し、その吉野さんが化学に興味をもったきっかけとして小学校の先生の勧めで読んだファデラーの『ロウソクの科学』を挙げられたことを受け、現在の邦訳版出版元でもある角川文庫の株式会社KADOKAWAでは、2万部(70刷目)の緊急重版を決定。
あわせて、『ロウソクの科学――世界一の先生が教える超おもしろい理科』(角川つばさ文庫)の3刷目1万部の重版を決定されました。
1861年にイギリスで出版されたこの書籍。内容は、イギリスの科学者マイケル・ファラデーが前年に英国王立研究所で6回連続で講演した内容を、ウィリアム・クルックスが編集して発売された講演録で、日本では1933年に岩波文庫から訳本が発売され、1962年からは三石巌さんによる訳本が角川文庫から発売されています。
そんな歴史ある古い本ですが、つい何年か前にもこの本のタイトルをみなさんお耳のされた記憶はありませんでしょうか。
そう、遡ること3年前の2016年に医学・生理学賞を受賞した東工大栄誉教授の大隅良典(おおすみ よしのり)さんも小学生の頃にお兄さんからプレゼントされてすぐに夢中になった愛読書として語られ、一躍ベストセラーに躍り出た本です。
そんな『ロウソクの科学』が吉野さんの口から再び出たことで、ノーベル2冠本として再び注目され、こうして緊急重版となりました。
電磁誘導の法則などを発見したファラデーがクリスマスレクチャーとして子どもたちに対して行った講演録ですので、比較的小学校高学年くらいならわかる内容になっています。
吉野さんは、小学校3~4年生のときに、担任の女性の先生から勧められて化け学って面白そうだなと興味を持たれたとのこと。
最近は神戸の小学校の先生たちによる同僚いじめ事件で小学校の先生の話題がニュースを賑わせていますが、こういった先生との出会いなら、いいものですよね。
活字だけではどうも苦手・・・というお子様には、科学者のファラデーが子どもたちに見せた24の実験をイラストと物語でやさしく教えてくれている角川つばさ文庫版の『ロウソクの科学――世界一の先生が教える超おもしろい理科』をどうぞ。
大人が読むなら岩波文庫版(竹内敬人訳)の方が知的なイメージで読めるかもしれませんね。
余談ですが、科学といえば、活字本には興味がなく漫画やアニメにしか興味がないというお子様には、現在『週刊少年ジャンプ』(集英社)2017年14号より連載中で、第64回小学館漫画賞少年向け部門を受賞し、TVアニメも好評放送中の『Dr.STONE(ドクターストーン)』がおすすめです。
突然の石化現象によって世界から人類や文明が消え、数千年後に自力で目覚めた科学オタクの主人公・千空(せんくう)が、科学の力で世界を取り戻そうと奮闘するという物語。
石器時代から現代までの200万年の科学史を一気に駆け上がるストーリーに、大人の私でも毎週ワクワクしています(笑)。
何十年後かには、『Dr.STONE』を見て科学に興味を持ちました・・・なんていうノーベル賞学者が出てくるかもしれませんね。